じょう




「まったく、ムカつくわよね」
中庭のベンチに腰掛け、仲良く並んでお昼ごはんを食べながらご機嫌斜めなのは、黄薔薇の蕾、島津由乃。
「はあ」
いつものように何に怒っているのかわからない彼女につき合わされ、曖昧にとりあえず相打ちをする紅薔薇の蕾、福沢祐巳。
「で、今日は何に怒っているのか、そろそろ聞かせてもらえないかしら」
カメラを拭き拭き、暴走寸前の由乃にも臆せず問い合わせる写真部のエース、武嶋蔦子。
これに新聞部の、というよりは「リリアンかわら版」の、と言った方が通じやすい(というのもどうかと思うけれど)山口真美が加わると、リリアンでは最強の2年松組となる。
何がどう最強なのかの説明は、この方たちが。


「説明?必要ないわね。祐巳の魅力に参った生徒と教師の数を考えればわかることではなくて?もちろん、彼女らは横恋慕に過ぎないのだけれど。私の祐巳に(以下略)」(紅薔薇さま・談)
「どうしてそんな馬鹿げたことを聞けるのです?祐巳さまが最強であることなど誰に聞かなくてもわかることでしょう。あの愛らしいお顔やしぐさ、掛けられただけで卒倒する生徒が続出するお声、万華鏡のように日々違う魅力を見せる表情、そして(以下略)」(細川可南子・談)


「由乃が最強である理由かあ。この絶えない生傷で察してくれないかな」(黄薔薇さま・談)
「そう言えば、昨日祐巳さんにプレゼントを渡していたクラスメイトが今日は欠席なんです。あ、その場を由乃さんが目撃していたのは偶然かしら?」(白薔薇さま・談)


「どこからともなく現れて、現れたことさえ悟らせずに再び消えてゆく。シャッター音どころか気配をあそこまで完璧に消せるのはリリアン広しと言えど蔦子さまだけですわね。悔しいけど、負けますわ」(ドリル・談)

「って、ちょっと、私はドリルなんて名前じゃありませんわっ!」


「真美ねぇ。あの子もまだまだよ、私に比べれば。え?私は単に暴走しているだけですって?ふふふ、どの口がそんなことを言うのかしら?この口?この口なのかしらっ?」(某編集長・談)



一部、意味不明もあるが、とにかく最強であることは事実。
そして、この4人が揃うと碌なことにならないというのもまた、2年松組の生徒が共通して抱く思いであることも。

閑話休題。

「何が、『紅薔薇の蕾に憧れているんです』よ。1年生の分際で私の祐巳さんに憧れるなんて、100年早いわ!」
「あの……」
「だいたい、1年なんかに祐巳さんの真の魅力がわかってたまるかってくらいなもんよね。そう思わない?」
「いやだから……」
「だいたいね、祐巳さんも祐巳さんよ!」
「へっ?!」
何とか宥めようと口を挟もうと努力はしたものの、すべてが空しく終わっていた紅薔薇の蕾は、水を向けられて却って驚いてしまう。
「まあまあ。今日はこのくらいにしてさ、ちょっと私、祐巳さんに聞きたいことがあるのよね」
あわあわと言葉を返せない祐巳に代わって蔦子が口を挟む。
「なに、蔦子さん」
助かった、とばかりに安堵の表情を浮かべるが、対照的に由乃はまだ言い足りないらしい。
気づいてはいたが、蔦子は無視して話しを進めた。
「祐巳さんの妹候補っているじゃない」
「あー……いるねぇ」
「それさ、増えてない?」
「はい?」
「ああ、増えてるよね」
祐巳はわからない、という返答だが由乃はどうやら気づいていたようだ。
「あれでしょ、えっと……」
「内藤笙子さん。よく祐巳さんと朝一緒になるわよね」
「ええーー?!笙子ちゃん?そりゃまあ、朝は一緒になることが多いけど……」
「どうして?」
「はい?」
「どうして朝一緒になることが多いわけ?」
「……なんでだろ」
「祐巳さん、ほんとにわかってないの?」
「聞くだけ無駄よ、由乃さん。それが祐巳さんだもの」
「そうね」
「??」

「それで、笙子ちゃんがどうかしたの?」
自分だけ意味がわからないのは不満だったが、お昼休みは無限ではない。
「うん、だからさ。公式妹候補が3人になったことで周囲がまた騒ぎ出したじゃない?んで、せっかく本人と近しいわけだから、この特権を利用してそこんとこの事実関係をちょっと教えてもらおうかと」
「それは是非、私も聞いておきたいわね」
「「さ、祥子さまっ?!」」
「あ、お姉さまー。ごきげんよう」
突然、頭上から降ってきた声に驚きの声をあげる蔦子と由乃。
祐巳はほえ~っと幸せそうに間延びした声で祥子を嬉しそうに見上げる。
「ごきげんよう、3人とも」
「ごきげんよう、紅薔薇さま」
「祥子さま、ごきげんよう」
慌てて返す2人に笑いかけるところを見ると、今日ははご機嫌がよろしいようだ。
「それで、祐巳はどう思ってるのかしら?」
「3人のことを、ですか?えーと……」
唇を半開きにして顎に人差し指を当てる。
目は上を見て、祐巳にとっては単なる考えるポーズなのだが、

「祥子さま、これを」
「あ、ありがとう。由乃ちゃんも、ほら、これでお拭きなさい」
「ありがとうございます、祥子さま。蔦子さんだって真っ赤よ。はい、これ」

自分のハンカチで拭けばいいのだが、各自が気づいてないのだからまあ仕方ない。
ぼたぼたと芝生を真っ赤に染めていく3人も目に入らないようで、一心不乱に考える祐巳。
「うーん……」

「言っとくけど、『3人とも好きだよ』なんてのはなしよ」
「うっ」
と蔦子が釘を刺し、

「そうそう。それに『皆が仲良くしてればそれで嬉しいよ』ってのもね」
「はうう……」
由乃も同調する。

今のリリアンで最も旬な話題だけに、ここで逃げは許されないらしい。
2人の好奇に満ちた視線が痛い。

ど、どうしよう……
焦る祐巳だったが、正直、妹候補と呼ばれる3人について、深く考えたことはなかった。
瞳子は意地張りの子供みたいで可愛いし、可南子のようにストレートに向かい合われるのも嬉しい。
一時の憧れがなくなっただけに、可南子の想いはより「福沢祐巳」本人に向けて純粋なものになっていたから。
瞳子も可南子も、それなりに山あり谷ありの関係を時間の中ですごしてきた相手だが、さて、笙子となると。
実はそれほどの関係があるわけではない。
たまたま蔦子と一緒にいた彼女を紹介されただけで、瞳子のように祥子を挟んでごたごたがあったり、可南子のように祐巳自身と揉めたり、そういうことは一切なかった。
かと言って、ではその他一般の1年生と同じなのかと言うと、決してそうではなく。
劇的な出会いでなくても、起伏に富んだ時間を共に過ごさなくても、穏やかに育つ情というのはあるのだ、と祐巳なんかは思う。

……情?
笙子ちゃんへの情って、何だろう?
はた、と気づいた祐巳を、3人は面白そうに眺めている。
「一人に絞れた?」
由乃の台詞を慌てて否定する。
「あ、そうじゃなくて」
「なら、何なの?」
と蔦子が聞くと、
「うーん。なんて言うか。そうだ!由乃さん!」
「な、なに?」
眼前に突然迫った祐巳のアップに驚きながら、けれど頬が赤いのは驚きのせいではないだろう。
祥子も興味深そうに、何を思いついたのか、と見守る中で祐巳は切り出した。
「ね、令さまへの情ってなに?」
「は?」
「令さまにはどんな情があるの?令さまの由乃さんへの情は?」
「……えーと?」

矢継ぎ早に投げかけられる質問に疑問符を飛び交わせる由乃に、いつもと逆になったね、と蔦子が笑う。
何を言い出すのか、と疑問に思うのは祥子も同じようで。
「いったい何が聞きないのか、落ち着いて話しなさい、祐巳」
「あ、えーとつまりですね、お姉さまと私の間には何がありますか?」
「何、って……そんなこと恥ずかしくて言えないわ」
「恥ずかしいことなんですか」
「祐巳さんも晩生だと思っていたら……」
「ちょ、ちょっと2人とも何をわけのわからないことを……」
「そうね、あなた方がどうしても聞きたいというのなら話してあげてもよくってよ。私と祐巳の愛のひと時、いえ永遠の愛を微に入り細を穿って……」
「「遠慮します」」

「それなんです」
「どれ?」
くる、と首を回して後ろを伺う蔦子。
やっぱり愉快な人だ、と思ったのは由乃のみ。
そりゃそうだろう、○タリロでやり尽くされたネタを知っている人間は、リリアンにはそうはいない。
「もう。ふざけてるんなら、私、考えないからね!」
元はと言えば蔦子さんから振ってきた話なのに、と珍しく怒り出した祐巳に、これまた珍しく蔦子が平謝りに謝る。
「ご、ごめん祐巳さん。私が悪かったわ、だから機嫌直して」
そんな蔦子を不思議そうに眺める祥子の耳に、由乃が耳打ちをした。
「この間、祐巳さんを怒らせたんです」
「祐巳が?怒る?」
益々わからない、というご様子。
「私の知る限り、祐巳が怒ったなんてことはないけれど」
「それは祥子さまだからですよ。にっこり笑って、『蔦子さん、命が惜しくないのかしら?』って、それはもうまるで祥子さまのよ……ごめんなさい、ほんとにごめんなさい、私が悪かったですもう二度と言いません」
「わかればよくってよ」
と、こちらも脱線している間に祐巳は気を取り直したらしく。

「2人、違う3人に対する情がね、わからないの」
「だから、じょうって?」
由乃の問いに答えず、祐巳は祥子を見た。
「さっきお姉さまが言ってくださった……その……」
言いにくそうにもじもじする祐巳に助けを出したのは蔦子。
「じょう……ああ、愛情ね」
「あら、そんなことを言いにくそうにしていたの、祐巳?」
「え、だってお姉さま……お姉さまがほんとうにそう思ってくださっているのか自信がないですし……」
由乃と蔦子は、「おいおい、何を今更」という顔をしたけれど、祥子は嬉しそうに、いやどこか逝った目をして祐巳を見つめる。
「ばかね祐巳は。妹を愛さない姉がどこにいると言うの」
「祐巳さんを愛さないリリアン生って言い換えても通用するわね」
「職員もね」



「それはつまり、あの3人にはそういった愛情が湧かない、ってこと?」
蔦子が尋ねると、
「そういうわけじゃないんだけど。何となく、お姉さまに対する気持ちとは違うなあ、って」
「そりゃそうでしょ。祥子さまだって、蓉子さまに対するお気持ちと祐巳さんに対してでは違いますよね?」
「そうね。姉に対してと妹に対してでは違うわ。姉に対してはただ傍にいるだけで姉も満足するのだけれど、妹には、自分がお姉さまから受けたご恩に報いるため、それに一人前にしてあげなければならないという気持ちがやっぱりどこかで働くものだから」
今ここで話している4人の中で、唯一の上級生、そして妹を持つ者として祥子の言は重い。
3人とも、なるほどという顔をして頷いた。
「妹に対して、姉はどういう情を持つものなんですか?」
もう少し具体的に、と続ける由乃。
やはり彼女も妹を作らねばならない立場上、気にはなっているようだった。
祥子少し考える風に、祐巳と同じように指を顎に当てる。
違うのは、彼女は下を向いた、ということくらい。

「守ってあげたい、かしら」
「守る、ですか」
「ええ。でも少し違うわね。成長を見守りたい、という方が近いかしら」
「なるほど」
由乃の疑問に答えた祥子の言葉に、蔦子が大きく頷く。
そのまま祐巳を見ると、
「じゃあさ、祐巳さん。瞳子ちゃん、可南子ちゃん、笙子ちゃんのうちで、そう思うのは誰?」
いきなり核心ではあるけれど、この話の流れなら下手に回り道する必要もない。
これにも、悩んだ挙句答えはでないんじゃないかと思った3人だったが、予想を裏切って祐巳は即答した。

「笙子ちゃん」

言われてみれば納得かな、蔦子はそう思った。
紅薔薇の系統からは外れる気がしないでもないけれど、それを言ったら祐巳だって前紅薔薇さまの蓉子や現紅薔薇さまの祥子とは全く雰囲気が違う。
その雰囲気というのは、緩衝材というか、祥子だけでなく山百合会全体を和らげている、それが祐巳の持つ雰囲気だと思うのだ。
だけどそんな祐巳にだって悩みや苦労はあるだろうし、それを気遣ったりしてあげられる人間が、今の山百合会には存在しない。
去年は聖や蓉子がちゃんと見ていて、それとなく手を差し伸べたり疲れた祐巳を包み込んであげたりしていたのだけれど、そんな人たちがいなくなった今の祐巳は相当無理をしているのではないか、と思う時がある。
瞳子の皮肉や嫌味、もちろんこれは照れ隠しから出ているものであるんだろうけど、それをさらりと受け流しているように見えて、でもそれはきちんと相手をしてあげていることをも表しているんだし、可南子と祥子が衝突しないように、それこそ緩衝材の役割を果たしてもいる。
だから、この2人では祐巳の安らぎにはならないのだ。
彼女たちを導いている、成長を見守っているのは間違いなく祐巳なのだろうけれど、その祐巳自身が疲れて倒れてしまうのでは何にもならない。
そこへいくと。

内藤笙子、彼女はふわふわと、まるで西洋人形のような美しさと愛らしさは白薔薇さまに似ている。
ちょっと違うかな、と思うのはそれが周りを照らすのか自分を照らすのかということで。
去年の1年間、志摩子を見てきた蔦子には、志摩子の可憐さが彼女自身を引き立たせるのに役立ってはいても、周りを輝かせてはいないことに気がついていた。
笙子を知ってから、まだそれほどの時間が経ってはいないし、また同じ学年でもましてや同じクラスでもない以上、彼女のことを観察するには時間が足りていないけれど、笙子が祐巳に近いということは何となく感じている。

祐巳が薔薇さま方を凌ぐほどの人気を誇っているのは決して、「紅薔薇の蕾」だからではない。
平凡で目立たない、一般的リリアン学園女生徒であった頃から、彼女は蔦子にとって格好の被写体であり。
それはきっと、1年桃組のクラスメイトたちにとってもきっと同じだったろう。
蔦子は写真に。
彼女たちは心の中に。
いつでも祐巳を写してきたのだ。

志摩子がいないと、それはすぐにわかる。
彼女の欠席は「志摩子さんは休み?」になる。
けれども、祐巳がいないとすぐにそれとは気づかないことが多くて。
それなのにひとりひとりがどこかくすんでしまっているクラス全体の雰囲気に気がついてしまうのだ。
目立つ存在でないのに誰からも愛されるというのはきっと、そういう祐巳のような人間のことを言うんだろうな、と蔦子は思っていた。
彼女の不在が辛いのではなく、彼女に照らされていた自分たちが彼女を同じように照らしてあげられなかったことに気づくのが辛いのだ。
だから桃組のみんなは、祐巳をそれぞれの心の中に宿してきた。
祐巳はたった一人ではなく、彼女たち全員の心にあった。
そうと気づくことはなくとも、とても自然に。

「祐巳さんに似ているもんね」
蔦子の言葉に首を傾げたのは、祐巳ひとりだった。
祥子も由乃も、何となくそう感じていたようで、大きく頷く。
そんな周囲の様子を見た祐巳は、
「ええっわからないの、私だけ?」
「まあ、そんなとこも祐巳さんの魅力よね」
「由乃ちゃんもわかってるみたいね。でも、祐巳は渡さなくってよ」
「紅薔薇さまも大変ですね。敵はリリアンの、ほぼ全生徒ですし」
「あら、その中に蔦子ちゃんも入っているのかしら?」
余裕の笑みを見せながら言う祥子に、由乃が噛み付き。
「祐巳さんはリリアンのみんなのものです。祥子さまばっかり愛でるなんてずるいですよ」
「あら、随分と小生意気な口を叩きやがるようになったのね」
「よ、由乃さん、お姉さまも落ち着いて……」
あたふたと間に入る祐巳という光景も、見慣れたものになってきたことに蔦子は苦笑しながらシャッターを切った。





「そう言えばさ」
「なに、由乃さん」
寄るところがあるから、と3人と別れて歩き出した祥子の後ろ姿を振り返って、由乃が呟く。
「祐巳さん大人気、って話だったのに祥子さまが随分余裕だったと思わない?」
「そう?」
「ああ、確かにそうね。いつもなら『私の祐巳に手を出す不埒者は誰なのっ』くらい言ってそうだわね」
「そのまま小笠原家の力で亡き者にすることくらいもね」
「……2人とも人のお姉さまを何だと思ってるのよ」
祐巳が儚く抗弁するが、どうしても力ない。
そんなことはない、と言い切れないところがどうしても自信のなさに繋がってしまう。
「それに寄る所って、あっちの方向は……」
「部室長屋よね。しかも我が写真部と新聞部がある文化棟の方向……」
「あ」
2人の会話を聞いていた祐巳が小さく呟く。
「なに?祐巳さん」
「何か知ってるの?紅薔薇さまが余裕なわけを」
2人に言い寄られて、困った風にぽりぽりと頭をかいて祐巳は思い出すように言った。
「真美さんに頼まれてアンケートに答えたんだけど……それかなあ」





「素晴らしいわ、真美さん」
「いえいえ。紅薔薇さまの御為ですから」
新聞部の部室では、祥子と真美が向かい合っていた。
「それでは、これが第二回の調査報告です」
「ありがとう。……この子ね、今朝祐巳に告白したという不届き者は」
「はい。ああ、それと、今日も祐巳さんにアンケートをとってありますので……」
「わかっていてよ、約束は守るわ。これ……今回は志摩子の分ね」
「ありがとうございます。……こ、これは……なるほど……」
「それにしても助かるわ。あなたが祐巳の調査をしてくれているおかげで、祐巳のすべてが私の知るところとなっていく……はあ、祐巳ぃ……」
「紅薔薇さま、涎が……私も助かります、山百合会の秘密情報をこれほどまでに持っていらっしゃるのは紅薔薇さまくらいですから。ですが……」
ふ、と口を噤んで。
疑問を投げかける。
「小笠原家の力を以ってしても、祐巳さんの情報は手に入らないのですか?」
その質問に、祥子は笑顔、どんな笑顔かはご想像にお任せするが、とにかく笑顔で答える。
「祐巳に関してだけは、そういう強引な手を使いたくないのよ」
小笠原の諜報員を使っているかリリアンの諜報員……自分のことをそう言うのも何かと思うけれど……それだけの違いでしかないんじゃないか、と真美は思ったが口には出さなかった。
まあ、女子高生が好きでやってることを横流ししてもらう、そう考えれば多少罪の意識は軽減するのかも知れない、そう思ったから。

そんな真美を他所に、祥子は再びアンケートに見入っていた。
その表紙には、『山百合会アンケート』と大きく書かれており、その脇に最小フォントで『(祐巳専用というか祐巳のみ)』とあったが。

「やはりこれよね……『あなたが一番好きな人は』『もちろん、お姉さまです』。ああ、何度読んでもいいわ。真美さん、じょう出来よ!」
「首尾はじょうじょう、こちらのじょう報もこれ以じょうないほどです」

その遣り取りを、祐巳と由乃とわかれて部室に戻りつつあった蔦子は扉の外で聞いていた。
「なるほど、今回の落ちはこれなのね。でも、ちょっと強引じゃないかしら」
自身、盗撮すれすれのことをやっている蔦子としては、この会話を聞いても「それはまずいのでは」なんて思わないようだった。

「それにしても、紅薔薇さまはじょう機嫌ね。……って、私もこんな落ちなのね」
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by rille | 2004-10-16 01:30 | まりみてSS
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